2025-12-19 大規模火災の4割が空き家!手入れされていない空き家の放置は危険
乾燥した気候が続いています。先月、大分市佐賀関(さがのせき)で起きた大規模な火災は、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。まずは、この火災で被害にあわれた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。一日も早く、安心できる生活が戻ることを願っています。
佐賀関地区はもともと空き家が目立つ地区で、古い木造住宅がひしめき、狭い路地に消防車が入れないことが延焼を促したと言われています。豊後水道に突き出る半島にあり、いつも風が強いという地理的特徴もありました。専門家は、空き家が撤去されていればスムーズに初期消火できたのではないかと指摘しています。複合的な要因もありますが、今回の火災をきっかけに、「空き家が防災面で抱えるリスク」が改めて注目されています。
◎空き家が火災リスクを高める理由

今回の火災で被災した建物のうち、空き家は約70棟で全体のおよそ4割を占めるとみられることが、市の調査で分かりました。空き家問題が景観や資産価値だけでなく、地域の安全に直結する課題であることを改めて感じました。手入れが行き届かない空き家は庭の草木も含めて火が移りやすく、拡散しやすいと言われています。他にも、空き家が火災のリスクを高めてしまう理由について、以下の4つがあります。
1.長期放置により「可燃性が高い状態」になる
空き家は長期間手入れされずに放置されていると、木材が乾燥し、燃えにくい加工がされた内装材が剥がれたり、断熱材が老朽化して燃えやすい状態になってしまいます。このような状態の空き家は、一度火が付くと一気に燃え広がりやすく、火の勢いを抑えにくいという特徴があります。また、老朽化により窓ガラスが破損している場合、風が入り込み、建物内部に火の粉が入りやすいため、あっという間に火が回ってしまうのです。
2.気づかないうちに「設備が劣化・ショート」する
電気やガスを止めずに通電したままの空き家の場合、長期間使われていない配線の被覆(ひふく)が劣化し、漏電やショートの原因になることがあります。また、小動物(ねずみなど)が天井裏や壁の内部で配線をかじり、ショート火災につながる可能性もあります。火災を拡散させるだけでなく、空き家そのものが「火災の原因」にもなり得るのです。
3.「放火・不審火」のターゲットになりやすい
令和6年の消防庁の統計によると、空き家火災の原因で最も多いのは「放火」または「放火の疑い」です。空き家は人目につかず、管理が行き届いていないため、放火犯にとって格好のターゲットとなってしまいます。
4.発見が遅れ、「初期消火の機会」を奪う
空き家は住人がいないため、火災が発生しても誰も気づかず、初期消火の機会を失ってしまいます。近隣住民が気づいたときには、すでに火の勢いが強まり、手のつけられない状態になっていることがほとんどです。今回の大分の火災でも、空き家を介して近隣の建物への延焼が広がったと言われています。
◎そもそもなぜ空き家が増えてしまうのか

空き家が増え続ける背景には、少子高齢化などさまざまな問題がありますが、地域特有の構造的な要因もその一つです。これは佐賀関地区に限らず、全国の古い住宅街や密集地で共通して見られる、深刻な社会問題です。
NPO法人「空き家サポートおおいた」(大分市)によれば、「空き家を手放したい」という相談は、佐賀関地区から多く寄せられているそうです。市も5カ年計画で空き家対策を進めていますが、この地区に関していえば十分に機能しているとは言いがたいのが実情だと言います。過疎化が進む地区では空き家の活用策が乏しく、主な対策は取り壊しとなりますが、佐賀関地区は古い木造住宅が密集し、家々が接する道が狭く、解体工事の車両が入らず、廃材の持ち出しなどが手作業となって費用が通常の数倍になるといいます。費用がネックとなり、所有者が解体を断念した結果、空き家が放置されているのです。
佐賀関に限らず、このような地域は日本中に多数あります。「空き家バンク」等の制度はあっても、利便性が低い地域では移住希望者が見つかりにくく、活用法も乏しいといった問題があり、さらに解体するにも費用が高額になるので、空き家のまま放置される家が増えてしまっているのが現状です。
◎火災・倒壊・治安悪化…様々な空き家リスク

火災のほかにも、空き家を長期間放置するとさまざまな問題が起こる可能性があります。「今は特に問題ないから大丈夫」と思っても、建物は時間とともに劣化し、やがて誰かに迷惑をかけ、所有者に高額な請求が来るという場合もあります。
リスク1)危険!「倒壊リスク」と所有者の賠償責任
令和6年の消防庁の統計によると、空き家火災の原因で最も多いのは「放火」または「放火の疑い」です。空き家は人目につかず、管理が行き届いていないため、放火犯にとって格好のターゲットとなってしまいます。
リスク2)地域の環境と安全を脅かす「犯罪・治安悪化」のリスク
管理されていない空き家は、庭木が茂っていて中の様子が見えにくく、また夜間は真っ暗で人の出入りがないため、不審者が侵入したり不法投棄などの対象となる場合があります。また、放火のターゲットとして狙われやすいなど、犯罪の温床になりやすいと言われており、地域コミュニティ全体の生活環境と安全性が脅かされることにつながります。
リスク3)熊が出ることも!「害獣・害虫の発生」
庭木や雑草が伸び放題になった空き家は、害獣や害虫の格好の棲み処となります。ハチ、蚊、ムカデなどの害虫のほか、ネズミ、アライグマ、ハクビシンなど害獣が侵入し、家を劣化させ、糞尿や騒音被害を隣家に与える可能性もあります。田舎の里山付近に空き家があるなら、最近問題になっている「熊」が出没する恐れも。庭に柿や栗の木がある家は要注意です。
◎最大の問題は「所有者の無頓着・無関心」

上記のように、空き家には災害や犯罪につながるリスクが潜んでおり、放置しておくのは危険ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。空き家の中には、相続が繰り返され、登記が更新されていないため所有者がわからないものも多く、勝手に解体工事や売却手続きを進めることができないため、行政でも手が付けられない、といったことが問題になっています。
また、相続人が遠方に住んでいて関心がない、自分が住むわけでもない家に手間やお金をかけたくない、といった理由で放置されている場合も多くあります。しかしそのような理由で放置していても、リスクが増えるだけで良いことは一つもありません。放置された空き家は急速に劣化が進み、やがて近隣に迷惑をかけ損害賠償を請求されたり、自治体からの連絡を無視し続けた場合、行政代執行(強制的な解体)が行われ、高額な費用が請求されます。放置期間が長くなればなるほど、建物の状態は悪化し、リスクは増える一方です。「いつか何とかしよう」とのんびり考えている方は、一刻も早く具体的な対策を講じる必要があります。
◎まとめ

実家を相続したはいいが、住まいは別にあるので放置している、、、という方も、空き家を放置することのリスクをお分かりいただけたと思います。遠方に住んでいて、空き家の状態がわからないという方は、まずは不動産会社や空き家管理会社等に依頼し、現地調査をしてみることをおすすめします。現状を把握することで、「修繕して活用できるか?」「解体は必須か?」などの方向性が見えてきます。
すぐに活用方法が決められない場合でも、これ以上の建物の損傷を防ぐために「空き家管理サービス」をご利用ください。月々数千円~で、毎月の見回りや家の周りの清掃など、ご希望に応じた管理をいたします。解体や売却をお考えの方も、ぜひご相談ください。